一歩一歩を大切に

山は人生を変えるのか?を知りたくて山に行く!

【北アルプス】2015/07 燕岳に行きたい(4)

(4)にして、やっと登山口スタートとなった。

斜面をジグザグに上がっていく道が見える。

土と石、木の根っこなどいろいろ有りだ。

北アルプス」というだけで緊張が増し身体がカチコチになる。

もし山小屋まで上がれなかったら、どうなるの?死んじゃうの?

そんな不安を背負いながら。

登りが苦手だ。やはり息苦しくなってゼーゼーしてしまう。今日は絶対山小屋まで上がらなければ死んじゃう!だから、疲れきってはいけない。ゆっくり少しずつ、体力温存しながら進むんだ!そう言い聞かせながら進む。

登り坂がひと段落し、少し平らな道を進む。

人の話し声が聞こえる。

ベンチが見えた。第1ベンチ。写真では見たことがあったが、初めて本物を見た。

ここまで来て、少し緊張がほぐれた。

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少し休憩を挟んで、歩き始める。

次は第2ベンチを目標に。

 

そして、あってはいけない事が起こった。考えていなかったのだから、当然に起こる事象である。

 

「お腹がすいた。だが、行動食は無い。」

 

夜行バスの後は朝ごはん食べられないだろうとか、7月は腐るから何も持っていけないとか、屁理屈を考えていた何日か前の自分を叱りつけたい衝動に駆られた。

それよりも、自分自身「行動食の本当の大切さ」を気づいていないまま今まで山を歩いていた事に愕然とした。

行動食という言葉を知らないわけじゃなかった、幾度となく雑誌でも読んだりしていた。しかし、なぜ行動食かの理解をしていなかったのだ。「山をなめてる」とはこの事か。

自分のふがいなさを強烈に反省しながら、空腹とともに第2ベンチ到着。

「山小屋まで上がれるのか?」再び不安が顔を出す。第2ベンチを出るとまた登り坂が急になったような気分になる。

牛歩より遅い歩みでゆるゆる進む。登山道は確かに整備されているが、道幅は狭い所も多い。当然のようにすれ違いが発生するのだが、「登り優先」という事で道を譲られることが多い。お腹が空いてヒーヒー。息が切れてゼーゼー。

きっと今の私はゾンビにような見た目であろう。

第3ベンチに到着。私は思っていた。

「合戦小屋に着いたら名物のスイカを食べよう」

合戦小屋の前にまだ富士見ベンチがある。先は長い。ただ危険な道が無いのが救いだった。

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苦しみつつ樹林帯の道を進んでいく。いつしか、花崗岩が風化した後の赤茶けた色の道も見られるようになった。そして木々の間から、「これが北アルプスの山並み?」と思える山々が見え始めた。美しい。写真で見たことがあるような気がしたが、実物の迫力に圧倒された。

まだまだ樹林帯は続く。空腹との戦い。

でも負けたくない。

合戦小屋が近いという表示が目にとまる。
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だがこの10分がとてつもなく大変だった。

何分かかったかわからない。空腹で卒倒しそうになりながら進んでいくと木々の間から屋根が見えた。

助かった。。。。。
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ここで私は更なる失敗をするのだ。

信州だから「蕎麦が食べたい」と思ってしまった。ところが小屋のメニューはうどんだった。散々空腹で苦労してきたはずなのに、ここでうどんを食べずに「スイカを食べよう」と思った事である。スイカで足りなかったらうどんも、、ぐらいに思っていた。

名物のスイカを楽しみに上がってきた事もある。

大きなスイカに塩を振って食べる。お腹に沁みる美味しさである。ジューシーでもありスイカでお腹がいっぱいになった。

元気が出た。しばし休憩である。飛んできたゴマダラカミキリが顔にあたり、スイカの横に落ちたなど、なんとなく微笑ましい出来事もあったりした。隣席の人がカミキリを持っていった。のどかな時間が過ぎ、このまま進む事にした。

ここからまたしばらくジグザグと登っていく。低い木が多くなってくる。

合戦小屋を出て15分もしないうちに、またお腹が空いてきた。スイカだけじゃダメなんだ!うどんのような炭水化物をお腹に入れないと歩けないんだ!

こんな大事な事に今更ながら初めて気付く。

空腹との戦い第2ラウンドに突入。ただでさえ、体力に多大な不安を抱えているのに。

合戦の頭というベンチの場所についた。ここから一気に視界が開ける。

北アルプスの稜線が見える。そして視線が山小屋の存在を捉えた。あそこだ!あそこに行くんだ!

だが空腹の魔の手が私の足を止める。数歩歩いては立ち止まるを繰り返す。やがて立ち止まるが座り込むに変わってきた。一歩が出ない。

シャリバテ。

道の脇に雪が残っていた。夏でも雪がある。とんでもない所にきたのかも。

まだまだ登ったり、傾斜が緩くなったりを繰り返す。朦朧としてきた。

幅の広い斜面が立ちはだかった。すると上からゴミ袋を背負った数人の男性達が烏天狗のごとくすごいスピードで降りてきて、またまもなく何も背負っていない状態でものすごい勢いで登っていった。後から思えば山小屋の方たちがゴミを合戦小屋まで降ろしにいったのだろう。素晴らしい身のこなしに、何十年ぶりかに口あんぐり状態で驚いた。少し元気が出る。

朦朧としながらゾンビのように進むとやがてテント場に出た。

あとこの階段を登ったら稜線だ。

一歩一歩。

登り切った時に目の前に北アルプスの山々がいっせいに並んでいるのが見えた。

イケメンな山々に囲まれて、一気に北アルプスファンになった。

右を見たら、美しい燕岳。

左からを見たら山小屋。

空腹の苦しみと達成感と美しい風景をこの目で見た感動がごちゃまぜになった不思議な気分。

 

とりあえず山小屋へチェックイン。

雲取山荘以来の二度目の山小屋は燕山荘。

受付にはたくさんの山小屋の方たち。

WEB予約だと、端末に電話番号を入力すると宿泊カード印字。すごいハイテク。

疲れ切って頭がよく回らない。

お支払いを済ませて、食事の時間やら館内の説明を受け、靴を脱いで上がる。

すかさず周りに立っている若い笑顔の従業員達がスリッパを「どうぞ」とにっこり出してくる。

やばい、ここは天国か?

もしかして私は既に途中で死んじゃっていたのではないか、と、疑いたいくらいだ。

 

今日の反省は今日に。

行動食大事である。

食べないと歩けない初めての経験。下界だと「お腹が空いても我慢する」が普通な感じだったが、山は違う。人間も生物の一つである。下界ではあまり意識しない事を実感した。気持ちでどうのこうのではなく、生物的に動いていくにはどうするかを考えなければならない。

苦しく、ちょっと苦い反省だらけの1日だったが、非常に満足できた日でもあり心は喜びに満ちた。

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つづく