【南東北】2015/11 安達太良山の空を見に行く(1)
2015年10月 上高地にて高村光太郎と智恵子の存在が私の中で俄然クローズアップして来た。
安達太良山にはどう行ったらいいのだろう?
まだ未知の場所である。
遠いので、是非泊まってゆっくりしたいとも考えている。
計画
計画)-1 どのコース歩く?
初めての場所は王道の登山コースを検討する。どうやらゴンドラで上がり、安達太良山を通過してくろがね小屋の方に抜けて、また出発点に周回するコースである。このコースなら、悪天候でも戻ったり、最初から悪天候の場合はゴンドラに乗らず最短でくろがね小屋まで行っておく、などなど天候によってエスケープが可能な感じである。
計画)-2 公共交通機関はある?
私は公共交通機関を利用して山に行く。
安達太良山登山口(奥岳登山口、ゴンドラ乗り場)に行くバスを調べる。
どうやらJR二本松駅から路線バスが出ているようだ。だが本数は少ない。朝1番のバスは奥岳バス停直通である。それ以外は岳温泉で乗り換えがあるなど、乗り換えができるかどうか確信がなかなか持てない。東京を早朝出て乗れるバスであるかどうか。
奥岳登山口行きバスに乗る為の電車を逆算していく。すると
東北新幹線で東京ー郡山
郡山乗り換えで在来線 郡山ー二本松で十分間に合う事がわかった。これだ!と思った。
計画)-3 どこに泊まる?
2015年 初山小屋泊をしてから、山小屋好きになってしまった。だから山小屋に泊まりたい。
くろがね小屋だ。
くろがね小屋のWebサイトから空きを確認する。そしてどうやら電話での予約が必要なようで、電話にて予約完了。
この一年で山小屋を何件か宿泊させていただいたが山小屋に寄って予約方法は電話だったり、メールだったり予約フォーム画面からだったりといろいろだ。絶対予約が必要だったり、一定人数以上のみ予約が必要だったりといろいろ違う。
私は「泊めていただく」というスタンスでいるため、その山小屋のやり方に沿う形で宿泊したいと思うタイプなので予約に関する情報などは事前に調べてあげるのが、これまた楽しみの1つになっている。
さて、交通機関も小屋の予約もオッケーなのであとは行くだけだ〜!
行く前に当然かもしれないが、高村光太郎「智恵子抄」の文庫本を買った。
つづく
【北アルプス】2015/10 北アルプス初級者、秋の涸沢に行ってみたい(2)
2015年北アルプス初級者として北アルプスデビューし、とうとう4回目の北アルプスになった。一歩一歩進むごとに、北アルプスはびっくりするような風景を私にプレゼントしてくれる。どんどん、どんどん北アルプスが好きになる。
(2)-1 本谷橋から涸沢へ
本谷橋を過ぎると登山道は登りにさしかかる。
またまた息が上がり、休憩を重ねながら少しずつ進んでいく。あんまりゼエゼエ言いながら座り込むものだから、本当に具合が悪いのではないかと他の登山者に心配される。
こんなゼエゼエおばさんの1人歩きでも、心配して声をかけてくれるって、登山者はなんて優しんだ!と心が温まる。
苦手な岩っぽい道は大きく左に回り込み、眼下に谷が見えるようになると、突然あたりが開けてくる。
地図で場所確認。まだまだ先は長いが、登山道が明るくなると気分も明るくなる。眼下の谷はだんだん登山道に近くなり、ナナカマドの赤が目立ってくる。思っていたほど歩いている人は多くない。
ナナカマドの横に立っていた男性が「すみませーん」と私を手招きする。ゴツゴツした苦手な岩の上を歩いて近づくと「シャッター押してもらえますか?」と聞かれる。高そうな一眼レフのカメラにドキドキしながらシャッターを押す。
静かそうに見えた男性は思いっきり笑顔で明るい決めポーズをとるもんだから、内心びっくりした。決めポーズいいなぁ。
遠くに建物が見える。
もう少しで夢に見た涸沢だ!ヒーヒー言いながら一歩一歩進む。涸沢ヒュッテと涸沢小屋の分岐へ到着。最後の200mくらいは辛くて辛くて立ち止まりを繰り返す。
(2)-2 涸沢小屋へ
涸沢小屋着。山小屋に到着すると落ち着く。
それ以前に「命の心配をしないで明日を迎えられる喜びが沸く」のかもしれない。山を始めるまで「明日の命」まで考えた事は無かったと思う。厳しい自然の中で人間の生物的な弱さを感じながら、それでも歩いていく。体力もまだまだ無いのに。自分の弱さに正面から向き合い、自分の命を大事に思う。そんな日が人生の中で起こるなんて思いもしなかった。
涸沢小屋は思いのほか空いていた。ゆっくり過ごせる。テラスに出てコーヒーを飲んだ。ああいいところだ。涸沢のテント場素敵だな。
夕食は鶏肉のソテーにトマトや野菜で作ったソースがかかっている。イタリアンが食べられるとは!美味しく完食。
同じ部屋になった女性2人組といろいろお話する。印象に残った山の話で「爺ヶ岳」の名前を聞く。いつか行ってみたいと思う。
(2)-3 涸沢の朝
夜明け前。目がさめる。
皆外へ外へと暗い中向かう。
私もつられて。
やがて山は赤く輝いた。生まれて初めてモルゲンロートを見た。テラスから身体を乗り出して北穂高岳方面に目が釘づけになって。自然現象は早々見られるものではないと思っていたが、間近で見られてなんとラッキーな事か。
当初は 涸沢 という地名しか知らなかったが、周りにそびえる山こそ人気の穂高岳だ(キタホ、オクホ、マエホ&吊り尾根)と気付く。山の迫力凄い!迫ってくる!
朝ごはんをたっぷり食べて、さあ帰ろう。
(2)-4涸沢から上高地バスターミナルへ
帰りは東京駅行きの直通バスを予約してる。
時間はあるのでゆっくり降りよう。
前日あれほどヒーヒー言って登ってきたが、帰りは早い。下りは得意だ。
本谷橋まで戻ってくると、登山もいよいよ終盤である。それにしても山を歩くとお腹が空く。
横尾から林道歩きがまた始まる。お腹はどんどんすく。森の中でカレーの香りが漂ってきた。
たまらない。その香りを嗅ぎながら歩くと程なく徳沢に到着。
1人で山は行けるけど、1人で食堂には入れない私。勇気を出して自分の殻を破ろう!
1人で食堂に入れた!すごいぞ自分!!
カレーライスいただきます。
カレーライスを食べ終わる頃、周りの人達がソフトクリームを食べている事に気付く。
1人でカレーライスで精一杯の自分。勇気を出してソフトクリームが食べられるだろうか?食べてみたい、勇気を出して。おずおずとカウンターに進む。何もまだ声を出していないのにカウンターのお姉さんは「ソフトクリームですね」と。すごい、エスパーだ!!!私の顔が不安から微笑みに変わる。
やがて賑わいを見せる上高地に到着。バスの時間までまだ余裕があるので、ビジターセンターとインフォメーションセンタをじっくり見て歩く。
高村光太郎がスケッチをしに上高地に滞在していた時の話があった。奥様は言わずと知れた智恵子である。私は智恵子は身体が弱いイメージを持っていたのだが、智恵子は光太郎に逢いにルンルンと上高地にやってきたという。その当時はまだ釜トンネルもなく、徳本峠を超えて来たのだ!智恵子、健脚!智恵子が来ると言うので光太郎もルンルンと徳本峠までお迎えに行ったという。2人の健脚さに猛烈に驚いた。
やはり安達太良山にも行ってみたいなとふと思った。
初めての上高地、初めての涸沢。私にとっては決して楽な行程ではなかったが、しみじみと自分の人生にいろいろと影響を受けたような気がする旅だった。
バスに乗り上高地を去る。
天気はこれより下り坂だと言う。
帰宅後、北アルプスに初雪が降ったと聞いた。
2015年の楽しい北アルプスはこれで終了。
来年もまた!
【北アルプス】2015/10 北アルプス初級者、秋の涸沢に行ってみたい(1)
何度か北アルプスに足を運ぶようになると「涸沢」というキーワードが耳に入ってくる。
紅葉すごい とか。
布団一枚に3人で寝る とか。
人がいっぱい とか。
人が多く集まる所は苦手ではあるが、心が「行ってみたい」方向に相当傾いていた。
そう思うといてもたってもいられず、登山地図を購入。
まずは自分が行けそうかどうかを地図およびその他情報をもとに調べまくる。
等高線はどうか、とか、岩場っぽいかどうか、とか、地図があるだけで結構幸せになれる自分に気づく。
そして行く決心を固め、次に交通手段と山小屋の調査を開始。
楽しい!こういう計画作業中の高揚感と楽しさはいったいなんなんだ!
気をつける点は、北アルプスはもういつ雪が降っても良い状況であると言うこと。降雪があったら、来年まで待たなければならない。
1泊して朝起きたら一面の雪という可能性もある。念のためではあるが一応軽アイゼンも持って行こうと思った。
行きは毎日あるぺん号を予約しようと思ったのだが、平日と休日で行こうと思ったためあるぺん号がなかった。いろいろ探すとさわやか信州号なる夜行バスが東京ー上高地に出ているではないか!無事予約!
山小屋も電話をして無事予約出来た。
あとは、行くだけ!!まだ雪が降りませんようにと祈る。
夜行バスに乗るのも4回目になった。
全く苦にならないので、ホッとしている。
初めての上高地だ。それも楽しみである。
1)-1 上高地
バスは朝5:20頃 上高地バスターミナルに到着。
バスを下車すると、思わず「寒い!!!」と声が出る冷え込みだった。まだ真っ暗なバスターミナル。
寒いのでどこか室内にと、上高地バスターミナルにある有料トイレに駆け込む。
有料トイレ内は快適だった。広い場所があるので身支度が出来た。
身支度を済ませ、外に出て持参した朝ごはんを食べると夜が明けてきた。
よし、横尾に向かって出発だ。
今回の懸念事項は上高地バスターミナルから横尾までの距離が10kmちょっとある事である。その長い距離を歩いてから涸沢までの登りは大丈夫だろうか。心配を抱えながらスタート。
出発していきなり河童橋が見えた。
写真でよく見る光景に心踊る。
横尾までは11kmの道のりであるが、平らな道は梓川沿いであり、想像よりも歩きやすい。
明神、徳沢、横尾と休暇ポイントがはっきりしているところも歩きやすい一因であろう。
1)-2 横尾から本谷橋
横尾から涸沢方面へ曲がる。ここからは登山道。梓川にかかる橋を渡ると気持ちが引き締まる。
登山道ではあったが、本谷橋までは急な坂道やら危ない道もなく、いつもゼーゼーハーハーする私も比較的穏やかに進む事が出来た。
川沿いの道の反対側に大絶壁の山がある。その山を見ながら、山を回り込むように登山道は続く。
そういえば出発直前に見たSNSで「涸沢の紅葉は見頃を過ぎた」という書き込みがあった。
ただし横尾から本谷橋へ進むうち、木々の葉がだんだん黄色く色付いて来ているのを見ると嬉しくなってきた。
私は人生の中でわざわざ「紅葉を見に行こう」なんて思った事はなかった気がする。
そう思うと、ちょっと自分は変わってきたかもと思わずにいられない。歳をとったせいなのか、自然に触れる事が多くなったせいなのか、登山を始めたせいなのか。ただ、昔の自分より今の自分の方が偏屈さが随分減ってきて好きだ。
人の声がたくさん聞こえてきた。
本谷橋についたのだ。
青空が広がっている。
皆、河原の石の上でランチタイムだ。
つづく
【北アルプス】2015/09 北アルプス初級者が頑張って行く立山三山(3) 初縦走終了
内蔵助山荘はご飯も美味しく快適だった。
私は昨日の自分の体力を省みないスケジュールの変更(浄土山登山の追加)を心底反省していた。
スケジュールをもっと検討すべきか、体力をもっとつけるべきか。いや、どっちもだろう。
体力とは何かが問題である。
登山で「体力」と検索すると持久力とかいろいろ出てくるが、そういう事の前にやらなければいけない事があったと気づいたのが2018年後半から2019年にかけてである。
私のように
息が切れやすい
すぐ疲れる
のちに(2017-2018)膝痛(膝の外側)
というトラブルに常時悩まされている場合、いろいろ勉強を重ねると原因はたった1つであった。
そこを気をつけると直ぐに8割ほど改善する。その改善1つだけで「体力がないわけではなかった。息が切れやすいわけではなかった。外側の膝痛はすぐ治るものだった」と体感出来る事に感動する。(もちろん個人毎に状況は違うと思う)
おそらく、無意識で出来ている人と無意識では全く出来ず意識しないと出来ない人の差だったのだと思う。
もともとそれが出来ていない人に「頑張れ」とか「普段からトレーニングした方がいい」とか「おしゃべり出来るくらいゆっくり歩く」とか「呼吸は吐いてから吸うのよ」とか「膝を着地時にクッションのようにして」というのはすぐには全く役に立たないアドバイスである。そのたった1つの改善を行った後でないとこれらのアドバイスは有効にならないのだ。
1つの改善はそういう一連のトレーニングの前提条件になる。前提条件を満たしてないのにアドバイスのような行動をとったりトレーニングをしたりしても無駄な努力となってしまうという事を痛感する。
これについては後程、別途述べたいと思う。長い話になりそうだ。
(3)-1 2日目 内蔵助山荘の朝
夜明けを見てみようと思った。
天気が良さそうである。
ああ山の夜明けは美しい。こういうのは地元 東京下町では見る事が出来ない。
時間とともに色が変わって行く。
気付くと富士山も見えたりする。日本海側の富山から太平洋側の富士山が見える事に感動する。富士山が高いのか、立山が高いのか、日本列島が狭いのか、いろいろ思いはよぎるが美しい光景である事は間違いない。ただただ見とれる。
内蔵助山荘から真砂岳稜線に戻る。
昨日はいろいろな焦りにより、美しい立山を満喫する事もそこそこになった。が、立山の美しさは私の心に刻まれ、また来たいと思うようになった。
別山への上りが始まる。別山を上りきると穏やかな広い場所に出た。たおやかな感じを受ける。
森林限界を超えた場所の広い場所、こういう場所が好き。
別山から劔午前小舎までの稜線歩きも素晴らしい眺めである。室堂全体が見渡せる。
ふと黒い山が目につく。
あれはもしかしたら劔岳?色が違うってことは、その山を構成する岩石も種類が違うんだろうなと、なんとなく地学科卒の私は考えながら歩いたりした。
劔午前小舎の屋根が見えてきた。
稜線歩きもそろそろ終わりだ。
雷鳥坂を下る。下ってからの雷鳥沢までのゴロゴロ岩の道がなんとも歩きにくかった。まだまだ学ぶ事がいっぱいある。
雷鳥沢テント場に到着。テント泊も気持ち良さそうである。いいなぁ。私はテント泊は無理かな。決め付けていいのだろうか。
美しい立山だった。山行が終わり、反省は多かったけれど立山は美しい。また来たい。秋も来たいが、別の季節も来たい。冬は来れるのか?いろいろ調べる事が増えたのも嬉しい宿題として取り組もう。
帰りはまた富山駅方面に向かう。メールが入った。スタイリッシュ女子からである。
「もしかして立山とか行ったのではないかと思ってます」と。やはりスタイリッシュ女子はエスパーである。
(4)反省
立山三山に行く計画を立てた時、一の越からの登山を最初に検討した。それでも自分のその時の体力を考えると劔午前小舎まで行くのも自信がなかったため、その手前の内蔵助山荘に泊まろうと思っていた。また、是非泊まってみたい山小屋だった事もある。
そして予約出来たバスは東京から室堂直通のバスではないため、室堂スタート時間が遅い事もあった。山行計画としては「一の越から内蔵助山荘に向かう。」でいいはずであった。
今回のスケジュールミスは自分の行動に起因していた。コースに無かった浄土山を急遽入れたためである。あれだけ検討していたにもかかわらずである。
いくら浮かれていたとはいえ、急なコース変更はこれからはやめようと思った。コース変更した時点で自分の体力とアップダウンなどの高低差を即座に再検討するのは難しい。浮かれていれば余計である。
素敵な場所だからもっと見たいという気持ちはあったとしても、何回も繰り返して来るのが私にとっては1番ベストだろう。無理はしない。
なるべく疲労の度合を少なくした方が山そのものを楽しめる。
いろいろ反省しながら帰りの新幹線。
鰤の寿司も美味しいなぁ。
そして実の所、浄土山が大好きになった。
別山もお気に入りになった。
好きな山が出来るっていいなぁ。
繰り返し立山には来よう。
もっと成長出来るかな。
まったりしながら帰宅。
【北アルプス】2015/09 北アルプス初級者が頑張って行く立山三山(2) 大いなる反省
(2)-1 コース
室堂から立山三山グルっと一周の山行である。
1日目:室堂ー一の越ー雄山ー大汝山ー富士の折立ー真砂岳ー内蔵助山荘(泊)
2日目:内蔵助山荘ー別山ー劔午前小舎ー雷鳥坂ー雷鳥沢ーみくりが池ー室堂バスターミナル
室堂に到着した時、立山の美しさに喜び、浮かれていたのだ。
立山黒部アルペンルートを利用したので室堂着は9:00である。自分の体力の無さも忘れて私は唐突にコースを変えた。浄土山から行ってみようと。
死にそう、とか、怪我したとか肉体的な痛みは無かったものの、心がチクリと痛くなる失敗の経験をした。スケジュールの大切さを身をもって山から教わったのが今回の山行である。
(2)-2 1日目 室堂ー室堂山ー浄土山
スタートは9:15になっていた。
私はまず浄土山に向かう。
秋めく山々にひたすら浮かれる私。
体力の無さもすっかり忘れて。
浄土山に行くためににまずは室堂山の展望台方面へ進む。少し高度が上がるたびに室堂の景色に驚き、そして浮かれる、の繰り返しになる。
次第に高度を上げて行く。「素晴らしい」としか言いようのない風景に圧倒され続け、バカな私は浮かれてホイホイである。
あ〜、秋に来れて良かった〜!
9月中旬の室堂はすっかり秋だった。下の世界はまだ夏なのに。
空とか雲海とか雪とか紅葉とか、人生長く生きてきましたが見たこともないコラボレーションにハッとする。
私の目は今まで何を見てきたのか?
本当に見るべきものを私はまだ見ていないのではないか?
室堂山の展望台から少し戻り浄土山へ。
岩がどんどん増えて行く。岩っぽい登山道はもしかして「初」!
浄土山の頂上到着。向かいに雄山が見える。
今日はあの雄山まで行ってその先の内蔵助山荘に泊まるのだ!幸せだ!と素直に思った。
だが、この時点で時間は12時になろうとしていた。
そして体力もない。
このヤバさに気付き始めた私は早々に一の越へ降りて行く。
(2)-3 1日目 一の越ー雄山ー大汝山
一の越で13時である。遅い。数年後の私なら13時から一の越スタートの雄山登山なんて絶対しないし計画も立てないだろう。
時は9月である。日暮れも早いこの時期だ。
雄山へ。ここで体力の無さ炸裂である。身体が前に進まない。身体が上に上がっていかない。
ヒーヒーゼーゼー。うるさいくらいにヒーヒーゼーゼーを繰り返す。
雄山に無事についたものの座り込んで息を鎮める始末である。
神主さんがそばによってきた。たしか「祈祷はされますか?」みたいな内容だった。私はヒーヒー言ってるだけで言葉を発する事が出来なかった。神主さんはそっと離れて行った。ヤバいです。私、この時、相当変な人だったと思います。
雄山で既に15時である。
本来なら山小屋についていなければならない時間である。
雄山から更に進む。そうだ山小屋に時間の遅れを連絡しよう!自分のauでは圏外が多かった経験を基に社用携帯ドコモ持参した。
山小屋に無事連絡出来た。ああ、きっと怒られちゃうな。それよりも私の今の状況の方がヤバい。疲労と日没との戦いがスタートである。
大汝小屋が見えた。16時。
疲労困憊である。2人の登山者と小屋番さんが小屋前で談笑している所に割り込んでしまった。
「この先の山荘を予約してるんですけど、とても疲れてしまって。。。」と言い訳のような、自分の不甲斐なさのぼやきも言いたいし、私のひっ迫した状況を知って欲しいような、などなど複雑な気持ちだった。
大汝小屋の小屋番さんは「ここに泊まって行ってもいいよー」と優しい言葉をかけてくれたが、私は先に進む事にした。おそらく小屋番さんの判断の方が正しいと後から感じる。
大汝小屋内に「菫小屋」看板があったのが和めた。
(2)-4 1日目 富士の折立ー真砂岳ー内蔵助山荘
富士の折立から急な下り坂になる。岩っぽい道も随分慣れてきた。怖くない。
怖いのは日没だ。
もう誰も歩いていない。1人旅だけど、周りにも誰もいない怖さを感じる。
今日最後の真砂岳への上り。ひたすらきつい。
気が遠くなりそうだった。
真砂岳の頂上には、1人青年が座っていた。
「どこ行くの?」と聞かれる。
「内蔵助山荘」
「こっちからすぐだよ」と指さしてもらった。
「ありがとう!」
私は進む。
程なく内蔵助山荘に到着。日没前で良かったと思うと足が震え出した。
私は怒られる事もなくチェックインし、山荘の説明を受け、夕食をいただいた。
もう夕食の時間は終わっていた。私は1人夕食をいただいた。
自分の体力の無さ、計画力の無さに対する不甲斐なさと自分に対する怒りで涙がポロポロ溢れてしまった。
涙と一緒に食べたアジフライは美味しかった。
続く
【北アルプス】2015/09 北アルプス初級者が頑張って行く立山三山!(1)
(1)-1 はじめに
北アルプスという地に引き込まれるように好きになっていく。
好きになるのに理由はないのかもしれない。
気付いたら落ちていて好きで好きでたまらない。逢いたくて逢いたくてたまらない。北アルプスはもちろん上級の山である。体力も技術も貧しい私などが、そうそう登れる所ではない。それでも自分の行けそうな所を探して行ってみたいという気持ちが溢れてくる。
2015年9月もう北アルプスは雪が降るのであろうか?雪が降ったら来年夏まで北アルプスには行けないだろう。待つ時間が長すぎる。だから余計に行きたくなる。
いろいろ調べると北アルプスの中では初級とされる立山が目についた。岩の道は苦手であるにも関わらず、見つけた写真の荒涼感というか、どこかの惑星的な風景というか、実物を見たいのである。
泊まる山小屋を検討すると、2015年のシルバーウィーク連休で大混雑らしく予約受付を終了していたが、休日ー平日の時に空きがあった。予約。平日1日有給を取ることにした。
そういう空いている日に合うような登山バスは無く、普通の夜行バスで富山駅に行き、立山黒部アルペンルートに乗り換える計画にした。
だが富山駅行きのバスは満席だらけで、検索を駆使してやっと探し当てたのが新宿のバスロータリーから出発する富山駅行きである。
(1)-2 出発
新宿駅から出発。バス2台だ。
登山向けではないから普通の人しかいない。途中で気分悪くなった乗客がいたが、滞りなく富山駅に着いた。先月に続き2度目の富山駅となると、親しみが湧いてきた。
地鉄富山駅から立山駅行きの電車が出ようとしていた。何人かの登山客が乗りに行っていた。
私は、立山黒部アルペンルートの往復チケットを買いたくて窓口が開くのを待つことにして、一本電車を見送った。
窓口がやがて開く。外人旅行客もチケットに並ぶ。驚いたのはチケット売り場員さんの英語の流暢さ。やはり現場で必要だから英語が話せるってすごいと思う。いつか必要になるために英会話教室に行ったりTOEICの点数を言うだけの人とはわけが違うと実感する。習うより慣れろってこう言う事なのかな。
やがて地鉄富山駅を電車は出発する。のんびりローカル電車だ。先月休憩した有峰口駅も停車した。懐かしい感じに襲われる。
小1時間で立山駅着。立山駅はまだまだ山じゃないようだ。乗客の流れに乗って、ケーブルカーに乗る。ケーブルカーからも高山という感じはまだまだであるが、確実に山深い方向に進んでいる。
美女平駅に到着。バスに乗り換える。立山黒部アルペンルートは乗り越えが多いが、一つ一つに乗りかえるたびに山深い地に行ける事がワクワクした。
バスは立山杉の森を抜け、弥陀ヶ原を通り、大日岳・奥大日岳を眺めながら、やがて室堂に到着である。
このバス路線の景色は圧巻である。初めて見る景色に私は驚きっぱなしであった。
9月。室堂は黄金に輝いているように見えた。
いよいよ登山スタートである。
続く
【北アルプス】2015/08 折立登山口へ行ってみたい(3)
雨と白いガスに包まれながら太郎平小屋に到着した。
ここに来れただけでも相当嬉しい。北アルプス初心者だからね。
受付をした。大事に持ってきた登山届も出した。「明日は?」と聞かれて「明日はもうおります〜」というと「えー勿体無いよ。是非薬師岳行って下さい!」とおススメされ「はい」と答える。小屋の方は登山届のコースのところに丁寧に「薬師岳」と追記してくれた。
自分の布団に案内してもらう。靴はここにおく、トイレはこちら、水道の水は飲めます、夕食と朝食の時間。
自分の布団の場所を把握したら、濡れたものを乾燥室に持っていく。干す場所が見つからないくらいぎっしりだ。この雨の中、登山客がいっぱいなんだな。
何人か眠れる布団エリアの壁側に。反対の壁側にも1人旅の女性。お休み中のようである。ザックが大きい。私も肌寒いので布団にくるまって夕食の時間を待つ。
夕食の時間になり食堂へ。小屋のどこにいたんだろうと思うくらいたくさんの人が並んでいる。
ご飯が美味しい。おかずは鶏肉の大きなフライだ。野菜のおかずも程よくあり、魚の昆布締めも添えられ、それはそれは美味しいかった。山とはいえ、魚王国富山県だ。
手作り風な箸置きも可愛いな。
私は1人で黙々とご飯を食べている。周りの登山客はワイワイとお話しをしている。ふと静かさが途切れた一瞬、ハスキーな女性の声で
「あーウラギンね」という会話が聞こえた。
カッコいい!裏銀座をウラギンとか言ってみたいよ、まったくもう!
まだまだ私には学ぶ事がある。
食後、下駄箱の前を通る。私の登山靴が頼りなげに見える。自分では随分奮発して買ったつもりのトレッキングシューズであった。だが、並んでいる靴を見比べると太郎平小屋から更に先の山に行くにはもっと本格的な登山靴が必要なんだ、と肌で感じる。よし!来年こそは!私ももっと奥深く山に触れてみたい!靴、靴、靴!
夜は疲れも手伝って爆睡だ。19時に寝るって、すっごい非日常でありながら、身体が休まる。
激しい雨の音で目が覚めた。
もうすぐ朝食の時間である。
朝ごはんをおかわり2杯。食欲絶好調であるが、やはり本日はこのまま降りようと決めた。
薬師岳はまた今度、もうちょっと勉強してからだ。
同じスペースを共にした隣人が話しかけてくれた。
「どこまで行くんですか?」
「雨が強くなったので降ります。本日はどちらまで?」と聞くと
「薬師岳を通ってスゴ乗越まで。でも危なさそうだったら薬師岳山荘で停滞かな。室堂まで縦走したいんで。」もの静かなトーンで淡々と話すタイプの方だ。すごく素敵な人だった。そうか、そっちにも行けるんだ。道は色々繋がっているんだ。
室堂。まだ行った事がないな。どんなところだろう?
支度をして、山小屋に礼を言い、外に出た。
小屋前で一旦あたりの風景を見回す。色々な方向に矢印がある標柱が目にとまる。
すごい!太郎平はあちらこちらに行くスタート地点なのだ。想像しただけで夢が広がる。
ところで「雲ノ平」って素敵な地名。
どこだろう?
そして「雲ノ平」という名前はしっかり私の心にインプットされた。
太郎平小屋を出たしょっぱなの木道。水の流れがすごい。木道が沈んでいた。
ゆっくりっくり歩く。幸い風はさほど強くないので元気に歩ける。登山道を流れる水が渓流のようだ。2日間、一部の風景しか見えなかったが、感覚的には「私の好きな風景!」と心踊る。是非晴れた太郎平にも来てみたいと心に誓う。
樹林帯に入る。下りは息が上がらなくて嬉しい。るんるん下る。
やがて折立登山口に戻ってきた。折立登山口には飲み物自販機がある。たった2日間山で過ごしただけで、「自販機!文明だ!」と思える。
そして、山から降りると飲みたくなるコーラがあるのだ。炭酸一気飲み。はー気持ちいい。
折立ヒュッテ内のスペースで雨具を脱いだり、ザックの再パッキングをする。
予約してある富山駅行きのバスまでまだ2時間ほどあるので、ゆっくりくつろぐ事にする。
川のような登山道をおりても、登山靴内に水が入る事は一切なかった。すごいぞスカルパミトス MF GTX!トレッキングシューズだけど、さすがである。
すると程なく女性2人がヒュッテ内に入ってきた。昨日会った、爽やかにスイスイ登るテント泊女子と初対面のテント泊可愛め女子である。テント場は水の流れが多く、テント下が川みたいになってたので撤収したとのこと。可愛め女子は新穂高まで行くつもりだったのに、雨がやみそうもなく下山。富山から帰るとのこと。すると大学生ワンゲル部団体様も雨で二日間粘ったけど晴れそうもないので、薬師岳諦めて下山だそうで。
雨は雨なりにみんなおしゃべりになり、意外と楽しいなと思った。
大学生ワンゲル部団体はタクシーをチャーターしていた。タクシー社員が「あと3人のれるよ。みんなで割ると安くなるよ。」と嬉しいお声かけ。私は帰りのバスチケットを購入していたが、時は金なりと思い、タクシーに便乗させてもらう事にした。
タクシー内の最後列に女子3人並ぶ(私も一応女子としてカウントする)。爽やか女子が「今まで驚いたトイレベスト3!」を話し出す。ベストかどうかは何とも言えないが。まだ私は山小屋に詳しくなかった事もあり覚えられなかったが、「手作り和式便器」の話は衝撃だった。それはトタンで出来ており、ちょっとしか出ないのに音が大反響して凄いからたくさんした気になるという話である。大爆笑である。OL登山者達の話に大学生はどう思うだろうと心配になったが、皆眠っていた。もしかしたら寝たふりで聞こえないようにしていたのかもしれない。気を使わせちゃったかな。
富山駅で皆様とお別れし、北陸新幹線へ。初めてだ。指定席も取れたので、ますの寿司弁当と黒部のお茶的なものを買って乗り込む。2時間ちょっとで上野到着。北陸がこんなに近いとは!!!これは頻繁に行っちゃうかもね。
折立に行ってみたいという気持ちで行って見たけど、なんだかとてもお気に入りの場所になった。またここから登山スタートしたい。
小さな出来事一つ一つが、私をもっと深く登山の世界に引き込んで行く。
そんな満足感に包まれながら、無事帰宅。
ああ楽しかった。